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アゲあげの揚羽蝶


「おーい!みかんの木の葉っぱ取っちゃダメだよ。」女房が「私、取ってないよ!」と。

2年前、伊予柑を食べ、残った種を鉢に埋めて

おいたら二本芽が出て20cm位になった。盆栽には不向きだが折角なので育てていたが、朝、

水やりの時一本の木の葉が全て無くなっていた。

不思議だなと思いつつ、隣のみかんの木を見た。幼虫がいた。

そういえば、2週間程前、揚羽蝶がベランダを舞っていたのを思い出した。幼虫は揚羽蝶だ。それにしても、一本完食しつくした後、どうやって隣のみかんの木を発見し、移ったのだろうか。植木鉢を這って降り隣の鉢を登ったのに違いないが、大したものだ。

水やりの時の楽しみが増え、そのまま幼虫を見守ることにした。

1か月半経った。急に、気温が下がり、ベランダに雨が吹き込んだ。これはいかん!だいぶ大きくなった幼虫を鉢ごと部屋の内に入れた。サイドボードの上に置いた植木鉢のみかんの木にいる幼虫を、毎朝眺めるのが楽しみになった。幼虫の色が葉っぱと同じで注意深く探さないと見つからない。「いた!いた!しっかり食べて大きくなれよ!」無事に育っているのを確認し声を掛け植木に水をやった。

12月半ば、何処を探しても幼虫がいない。女房を呼び、ふたりで探すが見つからない。  下の方の葉っぱに大量のフンがある。ハハーン、サナギになったな!でも何処にいるのだろう?潰してはいけないので、置物をそっと動かしあちこち探すが見つからない。隠れ忍者である。

インターネットで調べたら2週間位で羽化するとのこと。お正月に蝶が舞うかも?と期待をしたが、2月になっても現われない。エアコンの所為で乾燥してしまったためかもしれないと諦めた。

4月7日朝、「ちょっと来て!」と女房の大きな叫び声。何事かとリビングルーム兼ダイニングキッチンに行く。「蝶々が流し台に現れた!」見ると水を飲みにきたのか揚羽蝶がそこにいた。

指を差し出すと大人しく乗ってきた。そーっと、みかんの木に運び止まらせたが窓の明るい方を目指して飛びガラスの下に落ちた。また、指を差し出しみかんの木に運ぶ。カーテンを閉めたら、ジーと葉っぱにいるようになった。次の日花屋さんで花が咲いている苗を買ってきて、揚羽蝶を花の上に止まらせた。羽を広げて、ジーとしているだけで、蜜を吸う様子もない。そこで小皿にティッシュを敷き蜜を溶かし蝶を乗せた。後は餌を吸うかどうかは、蝶自身の問題である。羽を広げ、時には羽を閉じているが、部屋の中を飛び廻ることはない。かわいそうなので、天気の良い日にベランダのナデシコに移した。

しかし、約半年間我が家の中にいて家族の一員になったと思ったのか飛んで行こうとはしなかった。

10日後の4月17日朝、とうとう、触っても動かなくなった。ショックであった。

その日株が大暴落した。そう云えば、9月幼虫を見てから、株は景気が良かった。やはり、アゲあげの蝶だったのだ。

 4月20日名東区親善グラウンド・ゴルフ大会が牧野ヶ池緑地で開催され参加した。その時、競技場の芝コースに揚羽蝶が飛んで来て、何故か私の周りをグルグル廻り飛んで行った。この蝶は、我が家のアゲあげの蝶に間違いない。

「元気になったよ!」と私に報告に来たのだ。

 その日、何故か運よく、グラウンド・ゴルフ大会で入賞することができた。



 
 
 

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